2010年~11年にかけて行われた佐野元春の30周年記念ライブツアーファイナルは、まず3月6日に大阪城ホールで開催され、
オーラスの東京公演は3月12,13日(元春の誕生日)に開催予定でしたが、二日前の3月11日に東日本大震災が発生し、公演は延期。
そして今度は40周年で、ライブを始め様々な企画がありましたが、ご多分に漏れず中止や延期を強いられました。
昨年は「なぜまた!」と、なんとも因縁めいたものを感じずにはいられませんでしたが、元春がすぐに切り替えて、コロナ禍ならではの企画をいくつもプレゼントしてくれたので、後ろ向きにならずに済みました。
私は30周年40周年ともにファイナルライブは行かれなくて残念なんですが、30周年はDVDで見て、様々なライブレポート記事を読みました。
そのどの記事にも出ていた元春のMC。
「昨日、東北のファンの方からメールが届きました。たぶん、この会場のどこかにいると思います。そこにはこう書いてあった。《今夜は楽しみたいです》。みんなそう思うだろ!?」
その一言で、元春が何を言いたいのか、すぐに分かりました。
何年か前のライブでも元春は「ここにいる間は、思い切り楽しんでいってほしい」 と言っていたことがあります。
元春の中にはずっと「”エンタテイメント”とは何か」に対する「答え」があったのでしょうね。
そんな中、シネマトゥデイの『東日本大震災後の10年、映画の力を信じ続けた人々』という特集を見つけました。
震災以降、学校や避難所、仮設住宅の集会所など映画館のない地域で無料上映会を開催し続けている方や、震災当時とその後を追ったドキュメンタリー映画等に関わった方々についての記事でした。
無料上映会を開催している方は元々映画館を経営していて、震災二週間後にライフラインが復旧したらすぐ上映を開始すると「つかの間でも現実を忘れたい」という人たちが映画館に駆けつけたのを見て、映画館に来られない人たちのために映画を届けようと活動を始めたのだそうです。
記事の最後に筆者がまとめの中で「有事が起こると必ず文化・芸術不要不急論が巻き起こるのがわたしたちの社会」であると書いていました。
自粛についてはほんとうに、常に突きつけられる問題です。
でも、ここで元春の言葉を(彼が震災当日に発表した詩『それを「希望」と名づけよう』から)借りれば
不謹慎だとわめく偽善者を後に残し
君が光を放つことで、友を弔うんだ
それを「希望」と名づけていいんだよ
この10年、何度も何度も繰り返し、この詩を読んで咀嚼してきました。
コロナ禍の今、ようやく、腑に落ちたように思います。
「無闇に恐れないで
無駄に油断しないで
いつものフローで行こう」
武道館ライブを決めたと発表したときに元春が知らせてくれました。
自分の置かれた環境の中で、自分にできることを。
これからもずっと、考え、行動していきたいと思います。