佐野元春&THE COYOTE BAND [Zooey] Zooey
アルバムのタイトル曲が、アルバムの最後の曲。
重たく、足を引きずるようなサウンド。
何度も繰り返し聴きながら、歌詞カードを見つめ続けた。
が、ずっと、この曲の良さがわからないでいた。
歌詞がストレートすぎる。
「誰だってそうだろ?」
まっすぐなだけに、あまりに剥き出しで、ちょっと、ちょっと待って、と、距離を置きたくなる。
ライナーノーツには、アルバムタイトル名「Zooey」の由縁が書かれてある。
「生物学的な命が終わっても、決して消え去ることなく輝きつづける命を指している」
その「命」が欲するもの。
ここには、「こうありたい」という崇高な理想ではなく、本性はこうだろ、という、どちらかと言えば感情的な言葉が並んでいる。
目をそむけたくなるような、欲望を現わす言葉が。
居心地が悪い。
まるで責められているような気さえしてしまう。
「君のことだよ」
そう指を差されているかのようだ。
言い方を変えれば、アルバムに収められているどの曲よりも強く、ストレートに心に届いたということなのかもしれない。
でもね・・・
元春は厳しくて優しいから。
「それでいいんだよ」
そう言ってくれてるのかな・・・と、思うことにしてみた。
そうしたら、一番最後の曲「Zooey」が、その他のすべての曲を後ろから照らし出し、包み込んでいるようなイメージが湧いてきた。
そうか、そういうことか・・・
それで、もう一度アルバムの最初に戻って、タイトルを見る。
誰もが誰かに ただ愛されたいだけ
だから
「世界は慈悲を待っている」
欲望に忠実なこの世界のために
静かにその窓を開け放ってくれ・・・
ようやく、腑に落ちた。
自分なりにね。
ありがとう、元春。