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暖炉に火をくべて

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音楽、家族のことなどを、時々。

佐野元春&THE COYOTE BAND 『詩人の恋』 もうひとつの解釈

長男の友人。
障害児通所施設の幼児部に通っていた時からなので、かれこれ20年来の友人だった。

長男より一つ年下。
かなり重度障害がある男の子で、成長とともに二次障害も出てきて、入院することも多くなっていた。
それでも最近は安定していて、通所も休むことは少なくなっていたのに。
突然の出来事だった。
21年間、彼は命を燃やし続けました。
ご冥福をお祈りします。

夕方、長男を連れてお通夜に向かう車中、例によって長男がZOOEYを聴きたい(詳しくはこちらhttp://caorena.exblog.jp/19499086/)とアピールするので、聴き始めた。
“世界は慈悲を待っている”“虹をつかむ人”、“La Vita e Bella”・・・
いつもなら、一緒に口ずさみながら、この先へもっと、と、未来に向かう躍動感に心が沸き立つのに、今夜はどうだろう。
辛くて辛くて仕方がない。

これらが、こんなにも「生」を希求する曲だったなんて。
それとは真反対の場所に、「生」を失った彼にお別れをしに行く自分には、酷だ。
こんな状況で、改めて、曲の持つ「力」に気づいた。

帰り道。
曲順は進んで、大好きだけど辛くてなかなか聴けない“詩人の恋”へ。
いつもは飛ばすのだけれど、今夜はなぜか聴く気になった。

以前レビューhttp://caorena.exblog.jp/18513531にも書いているが、私はこの曲はずっと、亡くなってしまった大切な人への想いを綴ったのだと思っていた。
つい一昨日、渋谷公会堂でのライブでもこの曲を聞いている。
その時も、以前と同じように、「死を受容し再び歩き出す」イメージだった。

ところが今夜、気持ちが動いて、じっくりと歌詞を追ったら、驚いたことに全く違って聞こえたのだ。

愛する人が亡くなってしまった、なんていうイメージは、微塵も湧いてこない。
それどころか、今愛しい人と二人で過ごしているこの時を慈しみ、二人の未来について力強く唄っているではないか!

自分でも驚いた。
こんな風に聴こえたことはなかった。
しかもたった今、長男の友人にお別れをしてきたばかりなのに、だ。
こんなにも希望に満ちた曲として心に響くなんて!

そういえば、川崎のライブでも渋公でも、この曲を演ったあとに元春が言っていた。

「そんなにしんみりする曲じゃぁないよ?」

そうだね。そのとおりだ。
でもね、やっぱり悲しいよ。さよならはね。

たかしくん、見守っていてね。
ポーラスタアのように。

佐野元春&THE COYOTE BAND 『詩人の恋』 もうひとつの解釈_d0306695_1102714.jpg

by caorena | 2014-12-03 01:12 | 音楽