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暖炉に火をくべて

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音楽、家族のことなどを、時々。

佐野元春くん、君がいなくちゃ!

佐野元春&THE COYOTE BANDの新曲 “君がいなくちゃ”。
秋ツアーで聴いて以来、発売を待ちわびていた。
発売日の3月4日、0時を回ってすぐにダウンロードして、繰り返し聴いている。

私は秋ツアーの初日と千秋楽それぞれでこの曲を聴いたが、当たり前かもしれないが配信されたものとはずいぶん表情が違っていた。想いがほとばしっているというか、すごく若いイメージの曲という印象だった。特に初日の川崎クラブチッタでは、15歳で作ったというMCのあと聴いたからという先入観もあったかもしれないけど。
(公式には16歳の時に作ったということになったようだが、この夜元春は間違いなく15歳と言っていた。その後全国各地でライブに行った元春仲間の間(SNS)で15歳と言ったよ、いや16歳と言っていたよ、と情報が飛び交った。後々おもしろエピソードとして語り継がれること請け合い笑)

配信されたものはもう少し落ち着いた雰囲気になっていて、そのぶん心にグイグイ来る。ライブで先に聴いているだけに、あぁ、あの曲がこんな風に完成していたんだ!と、感慨もひとしお。

歌の部分はもちろんいいんだけど、まず、イントロにやられた。それも、最初の一音から。グッと心をつかまれ、そしてすぅっと、泣きそうになった。ギターの音が何か懐かしい響き。
間奏とアウトロもすごく好き。
あと、「強い勇気を~」の、フカヌーが声を重ねてくるところも。

最初は、これから来る春のような雰囲気の曲だなと思ったけど、繰り返し聴くうちに歌の後ろで鳴るヘビー目のギターに少し不安にさせられるようになった。君がいなくなったらという未来への不安=心が落ち着かない状態と重なるようで、とてもとても切ない気持ちになる。甘いだけじゃないオトナの恋、かな。

歌詞に目を転じてみると、元春は「今の自分の視点で歌詞を加えた」と言っていた。どの辺が加えた部分なんだろう?
と思っていたら、発売後すぐにYouTubeに、16歳当時の歌詞がアップされていた。
こういうところに載せるのはよくないのかもしれないが、すごく好きなので、あえて書き記す。


いつも気になること
いつ君はいなくなるのか
こんなもどかしい気持ち
君は知らない

君の胸の上に
この男がいたこと
いつか大人になる時
思い出すだろうか

大事なことだから
簡単に忘れられない
どれだけ君を必要か
わかってほしい

君がいなくちゃ
君がいなくちゃ
君がいなくちゃ
話が始まらない
君がいなくちゃ
君がいなくちゃ
心が荒れちまう

通りすぎるために
ここに訪れたわけじゃない
羽が雨で濡れたから
乾かしたいんだ

大事なことだから
簡単に忘れられない
どれだけ君を必要か
わかってほしい

君がいなくちゃ
君がいなくちゃ
君がいなくちゃ
話が始まらない
君がいなくちゃ
君がいなくちゃ


もうね、お母さんはドキドキですよ。倒れそう。
16歳の元春少年といえば、家出をして初めて女の子を知った頃でしょ。
狂おしいほどのヤング・ラヴですわ。
これはこれで、学生寮で大ヒットするのはまったくもって頷ける内容。
「通りすぎるために/ここに訪れたわけじゃない/羽が雨で濡れたから/乾かしたいんだ」
なんてところは、デビューしてからの歌詞に通じる部分だし、
「大事なことだから」は、皆様おなじみの「大事なことだから3回言いました」にも通じる(違w)

翻って、書き加えられた今の歌詞。
そのまま使われた「君がいなくちゃ」の部分が若い印象だけど、「いつ君がいなくなるのか」を「いつの日にか/二人を分かつ時が訪れるとしても」としたことで、どの年齢の人にも当てはまる曲になった。

わたしがこの曲の中で一番好きなフレーズ、ライブの時にも胸に突き刺さったのは、「見えない思いをつなげていくだけの強い勇気を/どうかこの胸に」。ここは完全に新しく創りだした部分だ。今の元春ならではの、勇気。

こうして二つの詩を比べてみると、生まれ変わった新しい”君がいなくちゃ”は、16歳の若い切なさと、すっかり大人になった今の切なさと、両方が表現されているすごく奥深い曲だなぁと思う。

ところで、"君がいなくちゃ"をずっと歌い継いできたみなさんは、歌詞が変わって今の佐野元春が歌う新しい"君がいなくちゃ"を、どんな思いで聴いているんだろう。もしかして、複雑な気持ちで居るんじゃないだろうか。
そんな風にちょっと心配したりもしていたのだが、当時の歌詞を見ることができたことで、その心配はすっかり払拭された。
あの歌詞は、今の元春は歌えないよね。
少なくとも、コヨーテバンドとの楽曲として世に出すものとしては。
きっとみなさんも納得してくれているんじゃないだろうか。

最後に。
上にも「懐かしい響き」と書いたが、繰り返し聴いていても、その懐かしい感じが何なのか、辿り着けそうで辿り着けないでいた。
それが、例によって元春ファンのDJ野村雅夫氏が、配信された翌々日の金曜日、自身のラジオ番組で早速オンエアしてくれたのを聴いた時に、ぱぁっと降りてきたのだ。その懐かしさの正体が。
それは・・・大瀧師匠。
いやぜんぜん違うじゃん、とおっしゃるかもしれませんが、閃いちゃったんですよ。そう思っちゃったんだからしょうがない。
それから、また繰り返し聴いていると、好きなコへのラブソングだと思っていた曲が、どうにも大瀧師匠に向けての曲のように聴こえてきて・・・
じんわりと沁みてくるのです。

繰り返し、聴けば聴くほど、いろんな表情が見えてきて、奥深い。
また改めて、ライブで聴くのが楽しみになった、「君がいなくちゃ」。
これからもずっとワクワクできるような曲を届けてくれて、どうもありがとう元春!

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by caorena | 2015-03-24 00:17 | 音楽